2018/04/12

グッバイ、ハリルジャパン




日本代表監督の電撃的な解任劇から早4日。

フランス・リールにある自宅の前で日本のテレビ番組の取材に応じたハリルホジッチは、「(自身への)恥だ」「何が起きたか分からない」「ウソ」「でっち上げ」と怒りをあらわにしていたという。

3年間の集大成としてのW杯を約2ヶ月後に控えた段階で、よもやの解任。
「なぜ、このタイミング!? で、後任の監督は西野? なんだよ、それ!?」と、一ファンの私ですら、JFA(日本サッカー協会)の前代未聞の“悪手”に空いた口が塞がらないほど呆れ果てているのだから、当事者のハリルが「納得できない!」と怒り心頭なのは当たり前の話。

解任を決めたJFAの田嶋幸三会長は、その理由と後任について、①マリ戦、ウクライナ戦の後、選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきたこと&今までの様々なことを総合的に評価して。②(その件に関して)直接、選手からも声を聞いた上での判断。③後任監督に技術委員長の西野朗氏を選んだのは「ハリルホジッチ監督を最後までサポートしてきた」から。④(これが一番の理由らしいが)「1%でも2%でも、W杯で勝つ可能性を追い求めていきたい」という思いによる。

と語っていたが、「日本が目指すべきサッカーは何か?」「W杯で結果を出すために何が必要か」というビジョンのもとに選ばれたはずの監督ハリルホジッチの下での3年間(八百長関与疑惑で退いたアギーレの1年を含めて4年間)を応援し、名将による本大会でのジャイアントキリングを期待してきた多くのファンにとって、到底納得のいくものではない。

確かに、ロシア行きを決めた昨年831日のオーストラリア戦以後、日本代表が後退しているのは疑いようのないことだし、「コミュケーションや信頼関係が薄れてきた」というのも由々しき問題に違いない。しかし、《「午後11時」に慌ててパニックボタンを押してしまうのは、首尾一貫したプランがなく、長期的よりも短期的なゴールに集中している証拠》という識者の言葉通り、本大会直前のこの時期に指揮官の首をすげ替えて、W杯で何を成し遂げたいと思っているのか。そして今後、追い求めてきたビジョンの蓄積もなされないまま日本サッカーは何処へ向かうというのか。

そもそも、ハリル解任の主たる理由に「コミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきた」ことを挙げているが(それが解任の理由というのも納得できないが)、監督と選手の間に溝があれば、それを埋めるべきは技術委員長の立場にあった西野氏であるはず。その西野氏が役割も果たせないまま代表監督にスライドすることが正しいことだろうか。

また、「1%でも2%でも、W杯で勝つ可能性を追い求める」というが、Jリーグでも成績不振で2015年以降、現場で指揮をしていないW杯未経験の監督を据えた上、僅か2ヶ月の準備期間で、どうして「勝つ可能性が上がる」と思うことができるのだろう。(W杯・日本戦の放映権を持つテレビ局などは根拠もなく「マイアミの奇跡(の再現)」などと持ち上げているが)

加えて、「表向きの理由は、ハリルホジッチでは選手をまとめられず、本番で結果が出せないと判断したという事になるが、本音のところはハリルホジッチに冷遇されたスター選手と、選手とセットで商品を売りたいスポンサーに忖度した結果(バックに電通の影?)」という事情通からの諦めにも似た冷めた声すら聞こえてくる。(要は金とビジネス。代表人気にすがる人々の焦燥が解任の背景にあったと見るのが自然ということか)

政治もサッカーも、「何を言っても(日本は)変わらない」という諦念から無関心が広がっていくのは同じ。

「ハリルホジッチが目指したサッカーが、どれだけ世界に通用するのだろう」と、その完成形が目撃できる6月を楽しみにしていた私も、ビジョンを放り出して迷走するJFLと日本代表の姿に、落胆を通り越して既にシラケ気味。

W杯が始まれば多少気分も変わるかもしれないが、今はただ「W杯までの1ヶ月、ここの合宿で一気に(ムードを)変えられる」「コロンビア、セネガル、ポーランドを徹底的に分析した。それぞれ違う戦術で戦う」と、意気高く力を込めて語っていた勝負師ハリルホジッチの情熱が懐かしい。

3年間の感謝と敬意を込めて、グッバイ、ハリルジャパン。オヴォワー、ヴァヒド・ハリルホジッチ。


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