2011/09/28

デイ・ドリーム・ビリーバー


ここ3、4日、ずっと頭から離れない曲がある。

カエラ、ミスチル、EXILE……誰の歌がラジオから流れようが、それは幻声のように消えない。

母の墓参りに行ったせいだろうか。ふと、口ずさむこともある。


Daydream Believer』……“夢想家”。80年代に解散したアメリカのロックバンド「ザ・モンキーズ」のヒット曲。

だが、私の頭の中を占領しているのは彼らの歌でも詞でもない。

20数年前、忌野清志郎率いる「ザ・タイマーズ」が日本語カバーし、今は亡き清志郎の名曲として謳われている『デイ・ドリーム・ビリーバー』の方だ。

清志郎が最愛の女性(亡き母)に送ったメッセージ……
その素晴らしい訳詞が、母性のような優しさを感じる彼のビブラートと見事に結ばれ、心に沁みる。




2011/09/24

明日を生きる奴は、


今を生きる俺に殺される。

来ました、悩殺の一言。キメたのは、ウォンビン。

と来れば……そう。いま話題の韓国映画『アジョシ』だ。

R-15指定の韓国作品。これだけで刺激度・興奮度の高さは確定的、『オールド・ボーイ』『チェイサー』『息もできない』に匹敵するコリアン・バイオレンス・ムービーか?と、高まる期待を抑えながら劇場へ。

で、その感想は……エグい、スゴい、超面白い! (まさに期待通り)

容赦ない“悪”、容赦ない“血”、容赦ない“怒”、そして底深い“悲”……手加減のない徹底した演出で、非現実の世界をリアルな感覚(痛覚?)で描き出す韓国バイオレンスアクションの真骨頂。日本映画が喪った“漢”映画、ここにあり!の傑作だと思う。

とにかく、ウォンビンがいい!

ストイックに研ぎ澄まされた肉体、憤怒と孤独を湛えた鋭く深い瞳、強く、速く、美しいアクション……自分を慕う少女を救うために、鬼と化した男の姿が、超絶カッコいいのである。

特に“目”の演技が秀逸だ。常に宿る悲しみ、激闘の末の恍惚、最後に見せる熱い涙……その痛いほどの切なさ、激しさに、男の私が魅せられるのだ。女性なら韓流ファンならずとも胸アツ必至ではないだろうか。
(但し、その前に、残虐なシーンに耐えていただかなくてはならないが)

加えて、脇役陣がいい。ラストもいい。……只々、見事な一本の誕生に拍手!

ちなみにこの映画、韓国では映画を観た女性の「何気なく隣にいる彼氏を見たところ、そこにはタコが座っていた」という素直すぎる感想が、全女性の感想を代弁した名言として評判になり、韓国男性には「デートに使えない映画」として警戒されていたとか……賢明な日本男子はご注意あれ。
(誰しもウォンビンと比べられてはね~……お手上げ、否、八本足上げ~)

2011/09/20

夏の終わりに。


八月は夢花火……

ラジオから陽水の歌が聴こえる。

私の心は夏模様……

皮肉にも夏の終わりを告げる、冷たい雨の朝だ。


気がつけば今日は、彼岸の入り。
「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通りというわけか。

ところで「彼岸」には当然ながら「あの世」という意味もあり、
彼岸=あの世、に置き換えると耳慣れた慣用句のニュアンスが変わる。

暑さ、寒さを感じられるのも、「あの世」にいくまでの間。
暑い、寒いと言っていられるのも、生きていればこそ……という風に。

原発、復興、増税、仕事レス(ん?)……気になることは多々あれど、
暑い暑い!と文句が言える「幸せ」を、イヤになるほど味わった2011年の夏。

終わればすぐに、酒と肴の旨い、新しい秋が来る。


さあ、今夜は新宿『鼎』で旧知の中年男子会!


2011/09/17

ユリゴコロ


本好きを自認していながら、今年に入って読んだのは漫画と仕事本・趣味本を除けば、まだ片手で数えるほど……少なっ!と、自分でも驚いてしまう。

3.11以降あまりそんな気分になれなくて……という言い訳もできるが、何でも震災の所為にしてはいけない。単に自分の気力が衰えているだけだと思う。
読むスピードも遅くなった。その分、眠気は直ぐにやってくる。(まあ、これは年の所為にしておこう)

ところが、最近そんな事態が二冊の本で一変した。
読めるのだ、グイグイと!……きっかけの一冊は先月読んだ怒涛のエンターテインメント小説『ジェノサイド』。怠惰な脳が慌てて飛び起きるほどの面白さに、今年初の“やめられない止まらない”かっぱえびせん状態に陥った。

そして、もう一冊は時間潰しに寄った練馬の本屋で偶然手にしたミステリー小説『ユリゴコロ』。

妙に惹かれるタイトルだった。著者は「沼田まほかる」……まほかる? 本名だろうか、その名前も気になった。奥付を見ると、1948年生まれ、主婦、僧侶、会社経営を経て50代で作家デビューと書いてある。主婦→僧侶? 50代で作家に?……経歴もかなりミステリアスに思えた。

その時点で「これは、ヤバイかも?!」と、心を持っていかれる予感はあったが、これほどとは……

すーっと背筋を血が走る。いくども肌が粟立つ……小説を読みながら、そんな感覚の震えを味わったのは『1Q84』以来だろうか。
恐怖感、おぞましさ、気味悪さ……ではなく、日常の底に潜む無垢で非情な孤独感、虚無感、無常観が瞬時に重なり迫ってくるような、何とも説明しがたい感覚だ。読むうちに普通の倫理観も飛び散った。人が特別な理由もなく次々に殺されていく話なのに……。

でも、この小説にとって“人が殺されていく話”は、あくまで娯楽小説として不可欠な伏線に過ぎない。読後感が快いのは、物語の根底に誰もが抱える深いテーマが流れているからだろう。

主人公とともに4冊の“殺人記”の謎を追い、いくつかの愛の行方を探す読者を、待っているのは鮮やかな結末……その「幸福」に胸が熱く震えるのは、きっと私だけではないと思う。


2011/09/15

有楽町で“ゴースト”&なでしこ。


ちょうど一週間前の午後5時半過ぎ、私は有楽町の駅前で道行く大勢の人々とともに「なでしこジャパンVS北朝鮮戦」を街頭テレビで見ていた。映画『ゴーストライター』を観て直ぐのことである。

こうして201198日は、珠玉の映画と熾烈なサッカーの記憶が重なる記念すべき日となった……くだらない人生を彩るには十分すぎる一日ではないだろうか。

と、少しハードボイルド小説風()な前置きをしたところで、本題へ。
                                                                        
あの『戦場のピアニスト』から9年……(月日が経つのは早いなあ)。ロマン・ポランスキーの新作は、ヒッチコックの作品とチャンドラーやロス・マクドナルドの探偵小説を足して割ったような雰囲気を感じる社会派サスペンスだ。

とは言え、ストーリー的にはさほど目新しさを感じない政治陰謀モノ(背景はイラク戦争)、ハリウッド的サスペンスの強い刺激や興奮とも無縁だ(派手なアクション・シーンは皆無)。しかも、突っ込みどころに事欠かず、謎解きにも格別の意外性はない……それなのに、あ~、

それなのに、観る者を捉えて離さない映像の魅力・魔力!
静かにじっくりと「不安」を呼び起こすシリアスな空気感、感情を揺さぶりながらスリルへ巻き込む巧妙な「舞台装置」、冒頭からラストまで一切のムダを感じさせない完璧なショット、そして、自らの心象風景を映すように全編を覆う深い寂寥感……

すべては御年80歳を迎えようとする巨匠の成せる業。

その枯れることのない美意識が醸し出す世界に、どっぷり浸る充足の2時間8分……多くの人に味わっていただきたい至福の時間でありました。

主人公の「ゴースト」を演じるユアン・マクレガーも◎



2011/09/11

あの日、失われしものへ。



3.11東日本大震災から今日で半年……先日、近しい友人たちが被災地・宮城県石巻市を訪ね、その現状をカメラに収めてきました。








2011/09/07

引き分けは、良薬か? 日本 VS ウズベキスタン戦


疲れました。あまり多くを語りたくない試合でしたね。特に前半は……。

トップ下に長谷部、ボランチに遠藤、阿部という、アウェー&ピッチ・コンディションを意識したらしい守備的布陣。それで早めの先制点を奪われては、厳しい試合になるのは当たり前……経験をかわれて先発した阿部の動きも良くなかったし、北朝鮮戦のMVP(個人的)長谷部も精彩を欠いた。最初から香川のトップ下で良かったのでは?

でも、アウェーで勝ち点1。相手も予想以上に強かったし、最低限の仕事はしてくれました。(決定的なピンチを川島が防いでくれたのも大きかった)
ただ、やはり本田不在の穴は大きい、個々の巧さ速さは感じても攻撃全体の厚みと迫力を欠く。といって代わりはいないので、昨夜の試合を良い薬として受けに回らず連動性・正確性を高めて前進してもらいたい……顔と体の迫力ならハーフナー・マイクで十分なんだけどね~。

岡崎のダイビング・ヘッド……今さらながらスゲェ~の一言。“地を這うようなシュート”はよく耳にするけど、“地を這うような頭(ヘッド)”は流石に聞かない。本人も怖いだろうけど、相手の恐怖感もさぞかしでしょう。特に最近は髪の長さが目立つし、貞子が飛び込んでくるようで……ゴメン。

さあ、次は1011日、ホームでのタジキスタン戦。

本田は間に合わないが、長友は帰ってくるはず。楽しみに待ちたい。


2011/09/06

おどろきの、60%超え。


ご祝儀相場とはいえ予想以上のV字回復……“どじょう宰相”率いる内閣の支持率が60%を超えたそうです。

震災復興、原発、財政・経済、年金、子ども手当、基地問題、海を挟んで拉致・領土問題等々の課題・難題が一億の肩と未来に重く圧し掛かる日本……政治にも政治家にも疾うに嫌気は差しているが、失望のままでは何も変わらない。ならば“瀕死の政権を悪戯に追い詰めるより、とりあえず支持して、その瀬戸際の必死さを喫緊の課題のために活用した方が良い”という、国民の我慢強さ&したたかな賢さ、そして前向きな意思を権力に示す60%超え……そう考えるのは少し穿った見方でしょうか。

さて、その支持率の一番の要因「野田総理」……新聞・テレビを通じて見知る限り、風貌や言説に派手さがない分、安心感・安定感があり戦後最大の国難に立ち向かう新政権の顔としての印象は悪くない。
妄言・失言で世間を騒がすこともなさそうだし、言葉にも力と誠意を感じる。以前、“酒・たばこの増税は、税制を通じた『おやじ狩り』”と喝破したように、当意即妙でロジックも明快、話す内容も分かりやすい。
「泥臭く取り組む」という政治手法や政策の中身は定かではないが、物事を堅実に前へ進めてくれるのでは……と多くの人に思わせる“発信力”も中々のもの(前任の二人が酷すぎたというアドバンテージはあるけど)。

ただ、その実務を担う閣僚の顔ぶれは? 勝手な印象ながら……政界の星組(蓮舫行政刷新相)、イケメン寝業師(細野環境・原発相)、政界の大根歌舞伎役者(鹿野農水相)、喫煙者の敵(小宮山厚労相)、何を雄弁会(安住財務相)、親米・財界政経塾(玄葉外相)、秀才係長(古川国家戦略担当)、以下保守一同……といった風情で、“どじょう内閣”とメディアが呼ぶような泥臭さと大衆性は感じられない。ましてや、政権交代時に多くが期待した“新しい風”など、どこ吹く風……民主も自民も同じ釜の混ぜご飯、明確な対立軸のない二大政党の不毛な綱引きの予感が募るばかり……。

とはいえ、3.11以降、霞ヶ関の官僚たちがかつてない使命感に燃え“目の色を変えて国難に立ち向かっている”という話も聞くし、私も多くの方々の賢明さを見習って、シカトせず瀬戸際・民主の必死さの程度を見定めるくらいの“監視意欲”は持ち続けたいと思う。

と言った矢先の「たばこ1700円」、あ~、早くも“おやじ狩り”が始まった……やさしい笑顔でこの仕打ち、何なんだよ~、コミヤマ~ 
健康も大事だけど、人生の味も大事なんだぜ!オヤジには。

2011/09/03

劇的勝利の夜が明けて……ザックJAPAN VS 北朝鮮


W3次予選初戦、ロスタイム残り1分、吉田麻也の値千金のヘッド弾で勝利した我らが“ザックJAPAN”……いやあ、本当にハラハラさせられました。でも、攻めて攻めて必死に奪った勝ち点3、苦しみぬいて掴んだ勝利は成長のための最良の糧。絶好のスタートではないでしょうか。

しかし、サッカーは何が起こるか分からない(だから面白い!)。実力差は歴然、しかもホームゲームなのに、ゴールが遠い……改めてW杯予選の難しさ、アジアの戦いの厳しさを感じましたね。フィジカルと精神力が持ち味の北朝鮮の守りも堅かった(後半はバテバテに見えたけど)。特にGK……脚をケガしていたようだけど、何なんだろう、あの神がかり的なセーブは!?

さて、自分勝手な評価ですが、昨夜のマン・オブ・ザ・マッチは断トツで長谷部誠。文字通り「堅守速攻」、苦しい時間帯も前線を鼓舞するようにゴールへ向かって攻め続けた姿勢が素晴らしかった! さすが日本代表キャプテン、“心を整えて”試合に臨んだことがよく分かりました。

全体的には、不動の司令塔・本田圭祐を膝の故障で欠いた影響大で、両サイドの香川、岡崎の脅威も半減、イマイチ攻撃に迫力が感じられなかった。本田の代わりにトップ下に入った柏木は、緊張からか動きが鈍くプレーに自信がなさそうで、自ら放った3本のシュートも情けなかった。この日本代表で“チームを円滑に動かす楔”の役割を担うには明らかに力不足。事実、柏木が退き香川がトップ下に入ってから攻撃が活性化したように思う。交代で入った21歳・清武も良かった。やはり若い世代が躍動する姿は見ていて気持ちがいい。柏木もまだ23歳、経験を積んで大きく成長してほしいね。

ザック采配は、いつもながら感服の至り。後半から入った清武、ハーフナー・マイクが期待通りに持ち味を発揮し、分厚い北朝鮮DFの打開策として十分に機能したと思う。特に、セットプレーからの劇的ゴールを生む大きな要因となった194cmの長身FWハーフナーの投入は、今後の攻撃パターンに新しい引き出しを増やしたという点でも大収穫。もう、言うことありません。